女医トイレットペーパー事件

 

これは私がまだ新人看護師だった頃の事件

 

新人看護師が1日に20回は考えること

 

「仕事辞めたい、つらい」

 

そう思う大きな要因は

 

覚えることが多すぎる

 

仕事が難しすぎる

 

お局看護師が怖すぎる

 

ドクターが意地悪すぎる

 

大体の理由はこれだと思うんです

 

 

わたしが働いていた病棟にも意地悪な女医がいました

 

 

 

ある日、週一の病棟カンファレンスで事件は起きました

 

 

 

偉い先生、研修医、リハビリさん、ソーシャルワーカー、出席できる日勤看護師全員、課長さん

 

約30名が集まるカンファレンスにその女医さんが数分遅れで登場しました

 

小さく会釈しながら空いている丸椅子に座る女医さん

 

わたしはその時点で気づいていたのです

 

 

女医さんの足元に垂れるトイレットペーパーの存在に…

 

 

日によって機嫌が変わり、すごく意地悪なことも言ってくる女医さん

 

みんな扱いに困っている女医さん

 

プライドが高い女医さん

 

 

そんな女医さんのズボンからトイレットペーパーが垂れているのです

 

 

しかも、ちょっと垂れているとかではなく

 

引きずるほど垂れているのです

 

 

 

わたしの横にいた仲良しの先輩もトイレットペーパーの存在に気づいていました

 

 

 

先輩が気付いていることに気付いたわたし

 

 

先輩に視線を送る

 

目が合う

 

笑ってしまわないように口を固く閉じる

 

 

視線を足元に移し 小さく肩を振るわせる

 

 

 

カンファレンスの内容は全く入ってこない

 

 

カタカタと震える肩

 

 

 

すると突然その女医さんがこちらに向かって一言

 

 

「ちょっと!便臭するわ!誰か近くの部屋の患者さん便してるんじゃないの?確認してきなさい」

 

 

 

はっ!

 

 

 

もしや女医さん

 

 

 

便でしたか…!?

 

 

 

もしかしてそのトイレットペーパーで拭いたのは尿ではなく便だったのですか…!?

 

 

 

 

わたしの同期が近くの病室の患者さんをチェックしにいく

 

 

でも便はしていない

 

 

廊下は便臭もしない

 

 

なぜかナースステーションには便臭が漂っている

 

 

 

ああ、これはもう確定だ

 

 

そのトイレットペーパーには便が付着している

 

 

 

 

さて、この事実をどうやって知らせるか

 

 

いや、知らせない方が身のためか

 

 

命が惜しいなら知らないふりをするか

 

 

 

それとも駆け寄って事実を伝えみんなにバレないようにスッとトイレットペーパーを回収してあげるか

 

 

でも待てよ

 

このトイレットペーパーは一体どこに挟まっているのか

 

 

 

ズボンと背中の間か

 

 

パンツのお尻の間か

 

 

お尻の割れ目なのか

 

それによっては、スッと回収しようとしたトイレットペーパーのズレる刺激で女医さんが変な声を出さないとも限らない

 

そもそもスッと回収できるかもわからない

 

 

というより便臭がすると言うことは露出しているトイレットペーパーにもブツが付着しているということだ

 

衛生的に考えて素手ではいけない

 

 

でも女医さんを前にしてゴム手袋を装着して近づくなどできない

 

 

 

 

するとその時

 

 

 

同期が言ってしまったのです

 

 

「先生、トイレットペーパー垂れてますよ」

 

 

 

あああ〜

 

 

さようなら同期

 

 

 

南無阿弥陀仏

 

 

 

 

 

そして同期はキョロキョロする女医さんに近づき

 

 

 

「え、う⚪︎ち付いてるじゃないですか」

 

 

と追い討ちの一言

 

 

 

 

アウト

 

 

完全アウトです

 

 

 

 

 

彼女の今後の看護師生活はもう…

 

 

 

 

 

その後は顔を真っ赤にした女医さんが

 

 

トイレットペーパーをひらひら揺らしながら

 

 

今までのどの急患の時よりも早い速度で

 

 

トイレへ消えて行ったのです

 

 

 

 

 

この事件以来、女医さんにどんな理不尽な言葉や意地悪を言われても許せるようになりました

 

 

わたしのミスはう⚪︎ち付きのトイレットペーパーを垂らしてカンファレンスに出席することよりは軽症だと

 

 

そう思えるようになったからです

 

 

 

 

 

ちなみに同期は元気に仕事を続けています

 

 

30人の前であんなことを言える彼女を心から尊敬します